最初に見たように、天之御中主尊(あめのみなかぬしのかみ、あまのみなかぬしのかみ)は、日本神話の天地開闢において初めて登場する神です。
天の真中に存在する神、宇宙を司る神であることは先述の通りです。
『古事記』で最初に登場する神であり、別天津神(ことあまつかみ)であり造化三神の一柱であることも見ました。
しかし『日本書紀』正伝では記載が見られず、異伝に天御中主尊(あめのみなかぬしのみこと)と記載されているに過ぎません。双方に記述があるわけではないため創造上の神であるという説もあります。
天之御中主尊(あめのみなかぬしのみこと)その起源
時代をまたいで平安時代の『延喜式神名帳』には天之御中主尊を祀る神社の名は認められず、この時代にはいまだ天之御中主尊への民間信仰の可能性は確認されていませんが、一般の信仰対象となったのは、近世以降と考えられています。
天之御中主尊は哲学的な神道思想において重要な鍵となることがあり、江戸時代の平田篤胤の復古神道では天之御中主尊は「最高位の究極神」とされています。
ただし上記のように、天之御中主尊は『古事記』『日本書紀』どちらにもあまり記載されておらず、最初に誕生した神であるという記載だけになります。
その他『古語拾遺』や『伊勢国風土記逸文』にも、名称のみです。中国古代道教思想の影響から生まれた神であるという説もあります。また、天の中央に北極星があることから、北極星を天之御中主尊になぞらえ、最高神として神格化され、天皇太帝とも呼ばれることがあります。
他に北極星や北斗七星を神格化した「妙見菩薩(みょうけんぼさつ)」と同一神とされたり、「水天宮」に祀られたりもしています。
このように、天之御中主尊は宇宙の中心、宇宙とつながる神、最高神との見方が一般的です。
また、長寿、病気平癒、開運招福、事業成就の他に、後に水天宮に祀られたことから安産のご利益があるとされています。
まとめ
ここまで天地開闢以降初めて生まれた神として天之御中主尊を見てきました。
歴史の中で様々な影響を受けながらも、最高神の座を守り君臨する神です。大半の人にとっては天照大御神(あまてらすおおみのかみ)の名のほうがが聞き慣れまた最初の神という印象を持っているかたも少なくないと思われます。
ギリシャ・ローマ神話における神の出現と対照して考察すると極めて興味深いものです。